多様性を活かす組織のつくり方

ERG/BRGの効果的な設立・運用ガイド:インクルーシブ文化醸成への実践アプローチ

Tags: ERG, BRG, インクルージョン推進, 組織文化, 従業員エンゲージメント

はじめに:従業員リソースグループ(ERG/BRG)がインクルージョン推進にもたらす可能性

インクルーシブな組織文化の醸成は、現代の企業にとって喫緊の課題であり、同時に組織力の向上に不可欠な要素です。経営層や人事部門主導の取り組みに加え、従業員自身が多様性を活かす活動の担い手となることの重要性が増しています。

その有効な手段の一つとして注目されているのが、従業員リソースグループ(Employee Resource Group: ERG)やビジネスリソースグループ(Business Resource Group: BRG)です。これらは、共通の属性、経験、関心を持つ従業員によって形成され、インクルーシブな職場環境の実現やビジネス目標の達成に貢献する自主的なグループ活動を指します。

本稿では、人事部門のD&I推進担当者の皆様が、ERG/BRGを組織のインクルージョン推進や組織力向上に効果的に活用するための、設立から運用に至る実践的なアプローチについて解説します。

ERG/BRGの役割と期待される効果

ERG/BRGは単なる従業員の親睦団体ではありません。戦略的に活用することで、組織に多岐にわたるポジティブな効果をもたらすことが期待できます。

ERG/BRG設立・運用における実践ステップと人事部門の役割

ERG/BRGの設立・運用を成功させるためには、人事部門による戦略的なサポートと枠組みづくりが不可欠です。

ステップ1:目的とビジョンの明確化

ステップ2:設立基準とプロセスの設計

ステップ3:リソースとサポートの提供

ステップ4:経営層・管理職の巻き込み

ステップ5:活動のモニタリングと効果測定

ERG/BRG活動の効果測定とKPI設定

ERG/BRGの効果を測定することは、活動への投資対効果を示す上で重要であり、改善点の特定にも役立ちます。以下に、設定しうるKPIの例を示します。

これらのKPIを追跡し、定期的に経営層や関係部署に報告することで、ERG/BRGの価値を可視化し、さらなるサポートや戦略的な連携を引き出すことができます。

成功事例と注意点

多くの先進企業でERG/BRGは成功を収めていますが、その成功にはいくつかの共通点と注意点があります。

成功の要因

注意点

まとめ:ERG/BRGをインクルーシブ組織づくりの強力な推進力に

従業員リソースグループ(ERG/BRG)は、従業員の多様な声と情熱を組織の変革と成長に繋げるための強力なツールです。インクルーシブな文化をボトムアップで醸成し、従業員エンゲージメントを高め、新たなビジネス機会創出に貢献する可能性を秘めています。

人事部門は、ERG/BRGの設立・運用における重要なパートナーとして、明確な枠組みを提供し、必要なリソースを確保し、経営層や管理職を巻き込む役割を果たす必要があります。単にグループ活動を「許容する」のではなく、戦略的な視点から「活用する」姿勢を持つことが、ERG/BRGを組織力向上に繋げる鍵となります。

本稿が、皆様の企業におけるERG/BRGの効果的な推進の一助となれば幸いです。従業員の多様な力を解き放ち、真にインクルーシブで強い組織を共に築いていきましょう。